無停電電源装置(UPSシステム)とは、入力電源や主電源に異常が発生したときに、設備の非常用電源として機能する電気装置です。UPSシステムは、電力会社からの不安定な入力電源を調整して中断されない安定した電力を供給する、電圧降下や短期的停電を埋め合わせる運転継続電源を提供する、そして全停電時のシームレスなシステムの遮断を実現するという、主な3つの機能を果たします。
一部のアプリケーションでは、単相と3相の設備が混在しているため、双方を保護するUPSが必要です。このような状況では、多くの場合、120Vと208Vを同時に出力できる単相3線UPSが最も適した選択肢となります。
UPSには、ボルトアンペア(VA)単位で表される電力定格値があり、その範囲は300 VA~5,000kVAに及びます。この定格は、UPSが対応できる最大負荷を示していますが、対象設備の電力負荷とぴったり一致する電力定格値を選定すべきではありません。電力負荷の上昇に対応できるようにするためのベストプラクティスは、対応しなければならない全負荷の1.2倍の電力定格値を持つUPSを選択することです。UPSでモーターや可変駆動装置、医療用画像装置、レーザープリンタに対応する場合は、これらの装置が起動するときに発生する高突入電力を考慮して、必要容量よりもさらに高い定格容量にしてください。
急速な電力負荷の上昇が予想される企業では、1.2よりも大きな乗数を用いる必要があります。最近のハードウェアは、従来のモデルよりも電力要件が高い傾向があるため、より高い電力定格値を織り込むことが、より多くの新設備への対応となります。
UPSは、トポロジーによってグループ分けされます。トポロジーとは、UPSと電力会社からの電力の連携方法を示すものです。これは、電源に期待される効率性と信頼性のレベルと言い換えることができます。UPSのトポロジーは主に5種類あります。
スタンバイUPSでは、UPSが問題を検出するまでは、電力会社からの電力で設備が稼働します。検出された時点で、設備はバッテリー電源に切り替わり、電圧降下やサージ、停電から保護されます。このトポロジーは、小規模のオフィスやホームオフィス、店頭の装置など、単純なバックアップを要するアプリケーションやその設備が外部の影響を受けにくいアプリケーションに最適です。
ラインインタラクティブUPS(Eaton 5P UPS、Eaton 5PX UPSなど)は、商用電力がUPSを通過して保護対象の設備に達する前にその電力を適宜増減させることで、またはバッテリー電力に復旧することで、能動的に電圧を制御します。ラインインタラクティブモデルは、電力異常からの保護が必要であるものの、商用電力が比較的安定しているアプリケーションに最適です。 このトポロジーは、主配線盤(MDF)および中間配線盤(IDF)の通信キャビネット、分散型のサーバー室やネットワーク室、一般的なIT筐体に最適です。
オンラインUPS(Eaton 9SX UPS、Eaton 9PX UPSなど)は、未処理の商用電力から設備を切り離したり、電力をACからDCに変換してからACに戻したりすることで、最高度の保護機能を提供します。他のトポロジーとは異なり、このダブルコンバージョン方式では電気がすでにUPSから供給されているため、外部の影響を受けやすい設備でもバッテリーへの移行時間はゼロになります。 基幹業務に欠かせない設備や、商用電源の質が悪く、信頼性が極めて低い地域では、オンライン(ダブルコンバージョン)UPSトポロジーが最も適しています。
マルチモードUPSは、効率性と保護の最適なバランスを実現しようとしている企業にとって最高の選択肢となります。このUPSには、高効率のエコモードと、高度な電源保護モードという2つのモードがあります。UPSは、商用電源の問題を検出すると、これらのモードを自動的に切り替えることができます。この機能により、運用コストを大幅に節約することが可能になります。
フォームファクターについてお話ししましょう。フォームファクターとは、UPSの形状的方向性や設置方法のことを指します。ほとんどのUPSは、ラックマウント型とタワー型という2つのフォームファクターカテゴリのいずれかに属します。
ラックマウント型UPSは、サーバーラックや壁に設置可能です。一般的にこの方式は単相ですが、イートンでは、Eaton 9PXなど一部の3相ラックマウント型UPSを提供しています。ラックマウント型UPSは、設備をラックや筐体にまとめたり、従来のように十分生かされていない壁のスペースを活用したりしてスペースを節約しようとしている組織にとっては最適です。
タワー(フリースタンド)型は、ほぼすべてのサイズのUPSでご利用いただけます。デスクトップのタワー型UPSから、大きすぎてラックに収まらないデータセンターのUPSに至るまで、タワー型は、ラックのスペースを節約したり、分散型の電源保護アーキテクチャとして単体のUPSを配備したりするためによく使用されています。
UPSについては、必要なサイズや型を判断する必要がありますが、それ以上に多くの機能が用意されています。イートンのUPSで利用できるその他の機能は、設備を保護するUPSのグループの中から、特定アプリケーションにとって最適なUPSソリューションを絞り込むうえで役立ちます。
拡張ランタイムUPS
ほとんどのUPSには、10~15分の電気設備の稼働に対応する内部バッテリーが装備されています。一部のアプリケーションでは、より大きなバッテリーバックアップが必要な場合もあります。
拡張バッテリーモジュール(EBM)は、UPSに接続して駆動時間を延長することができる補助バッテリーです。UPSの全負荷に対する使用率や、接続するEBMの数によっては、UPSの駆動時間を容易に数時間まで延ばすことも可能です。
発電機対応型UPS
利用できるスペースがあれば、発電機をUPSとペアリングさせることで、想定されるあらゆる停電を乗り切ることができるバックアップ電源が確保されます。UPSと発電機を一緒に配備する場合は、発電機の起動に要する1~5分の間に電源を維持することが、UPSの役割となります。
一部のUPSは、発電機とうまくペアリングできない場合があります。発電機対応型UPSについてはこちらでご確認ください。
リチウムイオンバッテリーUPS
UPSのバッテリーに関しては、長きにわたり制御弁式鉛(VRLA)バッテリーが業界の標準的な選択肢となっています。現在、イートンはリチウムイオンバッテリーを代用品として提供しています。リチウムイオンバッテリーはVRLAバッテリーに比べ寿命が長く、設置面積が小さく、充電時間も短いという特徴があります。リチウムイオンバッテリーUPSであれば、UPSの寿命期間中の運用費が大幅に抑えられます。
イートンのリチウムイオンバッテリー製品の詳細をご覧ください。
モジュラースケーラブルUPS
モジュラーUPSには、電力ニーズの拡大に伴ってUPSの容量が拡大するという柔軟性があります。補助UPSやより大型のモデルをあらかじめ購入しなければならない従来のUPSとは異なり、モジュラーUPSでは「システムの拡大に合わせた支払い」方式を採用しているため、電源保護システムが容量拡大の妨げになることもありません。
ネットワーク対応型UPS
分散型の電源保護アーキテクチャを有している方ならば、UPSにネットワーク監視機能や管理機能を持たせることの重要性については十分認識していることでしょう。すべてのUPSに関する遠隔監視能力を持つことは、単に便利なだけではありません。現場から現場へ移動するという無駄な時間を費やすことなく、迅速な問題解決が可能となるのです。
イートンのネットワーク接続カードは、イートンのネットワーク対応型UPSにプラグアンドプレイで接続できるように設計されています。接続カードを追加することで、ウェブインターフェースや接続されたソフトウェアを通じたUPSの監視が可能になります。
イートンのギガビットネットワークカードは、強力な暗号化、設定可能なパスワードポリシー、CAおよびPKI署名付き証明書の使用などの高度なサイバーセキュリティ機能を備え、UL 2900-2-2に適合しています。